個人の適性をトレーニングに生かす

個人の適性をどうやってレースに生かすかということは前回書きましたので、今回は練習にどうやって生かすかということ。

練習に生かすかという書き方をすると語弊があるかもしれませんが、自分がどういった練習をしなければいけないかを理解することです。
しかもどういった練習というのは、練習の中身ではなくて、1回のトレーニングの中での反復回数と、次回のトレーニングまでにどれだけの休息をはさまなければいけないかということです。

どういった練習をしなければいけないかの中身については、過去ログをアップした 鎌田が考えるエンデュランス競技のトレーニングについて シリーズを読んで下さい。
そこに書いたように、あくまで基本となるトレーニングは有酸素能力を上げるトレーニング。これを飛ばして高強度トレーニングをしても効果は上がりません。

前回、同じくらいのレベルの人と比較した場合、自分の長所、短所がどこにあるかを分析して、その基になっているのは遅筋、速筋の割り合いというところまで書きました。
おさらいで簡単に書くと、速筋が多い人は大きな力を出すことが出来る人、遅筋が多い人は回復力に優れる人です。

もう一度、同じくらいのレベルの人と比較をしてほしいのですが、同じトレーニングを繰り返した場合、同じような実力で、同じ強度で繰り返しているのに、後半になるにつれて差が出てくるということがあると思います。
これが回復力に優れているか否かの一つの指標です。
例えば10分×3/レスト5分というメニューを実施した場合、お互い同じ様な実力なので1本目は同着だったのに、2本目、3本目と差がひろがっていった場合です。
これは限られた時間で、お互いに全回復はしないのですが、その中でも回復出来た割合に差がある為に生まれてくる差です。

もう一つが、前日には同じ強度で、同じ距離を走ることが出来たのに、今日は一方の人は回復していて、一方の人は疲労が残っているという場合です。
これも回復力が優れているかの一つの指標です。

前者の例ですと、何をトレーニングのメインターゲットにおくかによって、やらないといけないことが変わってきます。
例えば、この坂を5分で登る(=強度固定)というのがメインターゲットの場合、回復力の優劣によって、3回実施するか、4回実施するかといった回数が変わってきます。
逆に10分×3セットを同じ数値でそろえる(=反復回数固定)というのがメインターゲットの
場合、300wで実施するか、280wで実施するかと、その内容が変わってきます。

後者の例は、150km5時間のトレーニングをしたあと、次の質の高い練習をするまでに、2日開けなければいけないか、3日開けなければいけないかという差です。
1週間のうち、ポイントとなる練習の日を何日設定出来るかが変わってきます。

エンデュランス系のトレーニングは質×量で評価することが出来ますが、回復力の優劣によって、どうしても質であり、量に差が出てしいます。
だから、トレーニングに生かすという目線で見たときに優れるのは、遅筋が多く、回復力に優れる人。これは自転車に限らず、エンデュランス系の競技をする上ではまぎれもなく、揺るがない事実です。

これは体質の部分が大きいので、人との比較ではなく、自分として質×量が最大になる反復回数、休息日の感覚を掴むことが大事です。
あいつが10分/300w×3セットをやっているから俺もやろうではなく、自分が10分×3セットを最大限キープ出来る強度がいくつかを冷静に判断する必要があるということです。
結果、同じ実力の人同士でも、練習の内容が変わってくる可能性があるということ。

ここまでのまとめ、結論を書きます。
1. 自分の回復力を加味して1週間の練習サイクルを作ること、何曜日に強度を上げて、何曜日をレストとするか、
2. 1回の練習の中でメインターゲットをしっかり決めて、回復力を加味して、その中身を逆算して決めること、例えば3回繰り返すということがターゲットであれば強度は逆算して求めるべきだし、強度がターゲットであれば、今度は反復回数が逆算して求められるべき、

ここからは雑談ですが、この回復力の差が、分かりやすいところで出ているのは、陸上のマラソン選手です。
近年の日本人選手がケニア、エチオピア人選手に勝てない理由は、色々な要素があってのことですが、その要因の一つに回復力=どれだけ練習を詰め込めるか、ということがあると言われています。
それ以外にも骨格などの要因も大きいのは事実ですが、生まれ持った練習出来る量の差が結果に出ているというのも事実です。
何で見たのか忘れてしまいましたが、 練習を詰め込める という表現をしていましたが、この表現が 正に という感じだと思います。
日本人も、ケニア、エチオピア人もそれぞれ限界ギリギリまで練習するのは違いないのですが、最後の最後に、この1本、もう一日だけ詰め込むことが出来るのがケニア、エチオピア人という表現でしょう。

これに屈せずに、ケニア、エチオピア人選手に負けない、アメリカ人長距離選手を輩出しようというプロジェクトが、ナイキがスポンサーになってやっている オレゴンプロジェクト というやつです。
いろいろ新たな取り組みを行っていますが、この回復力という面だけ見てみれば、このオレゴンプロジェクトの考え方は
 身体にダメージを与えずにトレーニングを積む方法を考える、
 身体に与えられたダメージは素早く回復し、次のトレーニングの質を確保する、
という2つの面が見て取れ、その結果トレーニングの質×量を増やそうとしています、、、但し、具体的に何をやっているかは、あまり公になっていないので、実際はどうかは分かりませんので、あくまで僕の印象です。

オレゴンプロジェクトしかりですが、エンデュランストレーニングについては自分の回復力をしっかり認識して、まずは自分の質×量を最大限に増やすこと。
それが結果を求める上での、自分が出来る最大限の努力。
人と比べてどうだったかという結果は、まずは自分が最大限の努力をするにはどうすればいいかを理解してからという話しです。