個人の適性について

自転車レースで勝つために必要な能力と、個人の適性についてについて書きます。
前提条件としてですが、何度も言っていますが、僕は自転車の専門家ではないので、コーチングは出来ません、あくまで出来るのはトレーナー。その前提で、自転車に乗る技術差(例えば下りが上手いとか、コーナリングが上手い)がなく、レース中の駆け引き(スリップをどう使うかとか)が全くない前提で読んで下さい。

まず大きく分けてレースに必要な能力は、 有酸素能力 と それを超えたパワーをどれだけ発揮できるか の2つです。その上でゴールまで複数人でたどりついた場合は、スプリント能力という3つ目の能力が必要になります。

まず有酸素能力については、非常にシンプル。この能力が高ければ、単純に言ってキツくないレベルでレースが出来るのだから、先頭から遅れるはずがない。いわゆるFTPとか、AT、LTを上げるトレーニングをすればいいわけです。

それに加えて、 有酸素能力を超えたパワーをどれだけ発揮できるか という部分。これが非常に複雑で、イメージとしては有酸素能力がメインタンクだとしたら、これがサブタンクの加速装置みたいなもの。有酸素能力については上限がない一方で、このサブタンクはタンクの数と大きさに制限があって、どれだけの時間加速出来るか、どれだけの回数加速出来るかというのが千差万別。
同じ有酸素能力を持っている二人であれば、このサブタンクの能力次第で決着が決まるし、
有酸素能力の差(例えばFTPが20w低い)もサブタンクの能力でひっくり返ることもあるでしょう。
むしろレース展開によっては、このサブタンクの能力の差が、結果の大半を決めていることもあるかもしれません。千差万別という中身は、1分の大きさのサブタンクしか持っていない人がいる一方で、2分のサブタンクを持っている人もいます。加えて、このサブタンクの個数というのも人それぞれで、何個サブタンクを持っているかで加速出来る回数が変わってきます。

複雑になりすぎるので、どこまで加速出来るか(50kmまで加速出来るとか、500wでアタック出来るとか)には触れないこととします。
では、1分のサブタンクを2個持っている人と、2分のサブタンクを1個持っている人が同意かというとそうではなくて、あくまで1分のサブタンクしか持っていない人は、次の加速までにいくらかの回復時間が必要になるので 1分×2個 と 2分×1個 は別の意味。

ここまで書いたところで、自分がどんなタイプか考えてみて下さい。例えばFTPが300wとした場合、400wのアタックが何分間継続出来ますか?30秒?1分?2分?その400wのアタックが何回繰り返せますか?自分の強み、弱みが見えてきたと思います。
よく雑誌などに書かれている、レースはFTPだけで決まるものではないというのが、このサブタンクの部分です。自分と同じくらいの実力だと思う人と、それぞれの項目についてどちらが優れているか考えてみると、どのようなレース展開をしなければいけないかが見えてきます。
比較する項目は

 加速出来る幅(どれだけ加速できるか)、
 加速出来る長さ(時間)、
 加速出来る回数、
の3項目です。

この3つの大きい小さい(多い少ない)が複雑に絡み合うので、一概に言えませんが、例えばお題をくれた大津さんを分析すると、加速出来る幅は比較的大きい一方で、加速出来る長さはそこそこ、回数は少ないという感じでしょうか。そうすると、何度もアタック出来る脚質ではないので、ある程度足を溜めつつ、限られたアタックで人数を絞って、少人数でスプリントというのが大津さんの勝ちレースという、誰もが思い浮かべる大津さんが正に出来上がるわけです。

こういった要素がかみ合って脚質というのが出来上がるのですが、トレーニングで鍛えられる要素と、ある程度生まれ持った要素に分類されます。これがどこから出てくるかというと、心肺能力、耐乳酸能力はトレーニングで鍛えられる一方で、筋肉の質は変えるのが困難です。
いわゆる速筋、遅筋の割り合いというやつ。
加速出来る幅が大きい人=速筋の比率が大きい人
加速出来る回数が多い人=遅筋の比率が多い人=回復力が高い人
この二つの項目については生まれ持った要素が大きいので、ある程度は鍛えられるとしても、あくまである程度でしょう。これを生まれ持った人がそれぞれの分野の頂点に立つ人です。

速筋が多い人といって思い浮かぶのはスプリンター、自転車で言えばキッテルやカベンディッシュ、分かりやすいです。クライマー=遅筋が多い人?これはクライマーという言葉の定義によります。2012年ツールのウィギンスはクライマーでした、山を登るのが速い人という定義でクライマーという言葉を使うのであれば。でも、この時のウィギンスは、あくまで自分の持っている有酸素能力の上限で上っていただけで、僕の言葉で言うサブタンクは使っていませんでした。いうなればプロトンの中で、抜群の有酸素能力とパワーウェイトレシオを持っていただけ。だから、この場合はクライマー=遅筋が多い人の説明には十分ではなくなります。
こうやって分析していくと、クライマー=遅筋が多い人に合致するのはコンタドール。コンタドールプロトン有数の有酸素能力、パワーウェイトレシオを持っているので、非常に上りが速い。
加えて、遅筋の割合が多く、回復力に優れるので、そこから何度もアタック出来ると。

 

有酸素能力と筋肉の特性だけで書いてしまっていますが、これに耐乳酸能力などいろいろ絡んできますので、もちろんこれだけで決まるわけじゃないですよ。

イメージ湧いてきましたか?整理出来ましたか?
ここまでが自分の適性を分析して、どうやってレースに生かすかというところ。
次回は練習にどう生かすかということに繋げていきます。